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時計夜話第3です。

今回はSEIKOが1983年に発売し一世を風靡したジウジアーロスピードマスターの復刻版にまつわる悲しいお話です。

私が持っているのは1999年に3000個限定で発売された内の2323番にあたります。オリジナルは、55000円で発売されましたが、復刻版は定価30000円でした。そして私は、さらに値引きで¥20100で入手しました。前々から欲しいと思っていました私は予約まで入れて、発売と同時に手に入れたのです。

この時計の魅力は、あのジウジアーロがドライバー専用に設計したといわれる、傾斜して盛り上がった独特の風防と、外周のロータリースイッチを回して様々なモードに切り替えが出来る操作性です。

発売当時は高値の花だったこの時計が復刻され、さらに安い価格で手に入れられると大喜びで入手しました。実際、バイクに乗りながらでも使いやすくもちろん故障もしない申し分無い時計でしたが、悲劇は突然訪れたのです。

去年のある日ジウジアーロの電池が切れました。1999年に購入してから一度も電池交換をしていませんでしたので、軽い気持ちでポイントが溜まる大手量販店の時計コーナーで電池交換を依頼しました。
そこで、数十分後電池交換が終わり何気なくロータリースイッチを回したところモードが切り替わらないことに気が付いたのです。

その場で担当者にクレームを付けた所、「故障かもしれないので修理に出してくれ」と、耳を疑う台詞を受けたので、直ちに返金を要求しました。その後どうしたものかと思案した結果、自宅の近くにある小さな個人営業の時計屋に見てもらったのです。

そうして、目の前で時計を分解してもらったところ、ローターリーとスイッチを結ぶスプリングが明らかにひとつ無くなっているとの事が、初めて判りました。「くそー池袋の○ッ○カ○ラめ!壊しておいて抜けぬけと!」あの時もっと抗議すればよかっと思いましたが、後の祭りでした。幸いここの御主人が元SEIKOで働いていた方でしたので、何とか手を回して部品を調達してくださるとの事でした。

そして、待つこと数日ジウジアーロは元の姿に戻ったのです。

ここで、大きな教訓。「クオーツウォッチといえども、大事な時計は信頼のある時計店に任せること」。

しかし、今回はSEIKO製であるから免れた災難でしたが、これが他の某メーカーだとこうは、いかなかったと思います。

この事に感激した私は、家で電池切れした時計をかき集めてお願いしました。というのも、電池交換プラスアルファの代金でこんな面倒なことをしてくださった事に感動したからです。そう、本当に愛着のある時計を長く持つには近所のこのような腕のいい時計職人にいる時計屋さんが絶対必要なのです。

そして今度時計を買うときは、「多少大型量販店で買うより高くてもおっちゃんの所で買わせてもらいます」と、心に誓ったのでした。

そんなある日、その時計屋の前を通りかかったところ、葬式の花輪がその店の前にありました。電池交換をしてもらってからわずか3ヶ月後です。まさかその時は、てっきり家の別の方のお葬式と思いましたが、その後お店に電話したところそのご主人が亡くなられたことが判りました。

お会いした時はそんなにお年でもなかったのに・・・。
短い時間でしたが、私はこの方に日本人の職人魂を感じました。
もっと、もっと時計のお話をしたり、SEIKOの話をお聞きしたかったのに、残念です。

このご主人のご冥福をお祈りするとともに、時計を愛する人々に、一日でも早く自分の時計を託せるお店が見つかりますように・・・。